輔仁薬局

健康処方箋 column

輔仁薬局健康処方せん薬が飲みにくくありませんか

薬が飲みにくくありませんか

author:けやき通り薬局 薬剤師 栗林 恭兵
published in:大分合同新聞令和3年6月掲載  No.147

 薬の飲み込みがうまくいかず、むせてしまったことはありませんか。加齢に伴って嚥下機能(物を飲み込む機能)が低下して薬が飲みにくいと感じている方は少なくないと思います。そのためストレスを感じ、服薬を中断してしまうというケースがあるかもしれません。そうならないために対策をいくつか書きたいと思います。

 まず薬を飲むときの姿勢です。椅子に座って服薬する場合は、かかとをしっかり床に付けることで、姿勢が安定し、飲み込みが容易になります。それに加えてお尻をずらして上体を少し後ろに倒した姿勢だと、重力で飲み込みやすくなります。但し首の角度が上を向いていると気管に入りやすいため、あごを引き、うつむき加減で飲みましょう。また、口腔や咽頭などに食塊や薬がたまりやすい場合は、前や左右と首の角度を変えながら数回ほど空嚥下(口の中に何も入れずに唾を飲み込む)するのもよいでしょう。

 飲むための姿勢だけでなく、飲みやすくするために工夫できることがあります。「オブラート、服薬ゼリーを利用する」「とろみを付ける」「錠剤を粉砕する」などあげられます。錠剤が大きくて飲みにくいからと、ご自身で割ったりつぶしたりして飲んでいるということを聞くことがあります。しかし、自己判断で割ってはいけません。割ることによって、薬の効果が無くなってしまったり、副作用が出やすくなったりするものもあります。飲みにくい場合は、必ず主治医や薬剤師にご相談ください。

 また薬だけでなく、食べ物や唾液、胃液などが誤って気管に入ってしまうことを誤嚥(ごえん)といいます。誤嚥により細菌が肺に入って炎症をきたす誤嚥性肺炎は、高齢者におこる肺炎の7割以上を占めます。そのため嚥下機能の低下には注意しましょう。

 加齢とともに何らかの持病を抱え、毎日服薬している方が多いと思います。「飲み込みの姿勢」「薬を飲みやすくする工夫」を実践し、誤嚥も防ぎ、服薬に対する心身の負担を減らし前向きな気持ちで治療に臨んでいただきたいと思います。
それではお大事に。

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