輔仁薬局

健康処方箋 column

輔仁薬局健康処方せん薬を飲めば良いというわけではありません

薬を飲めば良いというわけではありません

author:輔仁薬局弥生店 薬剤師 副瑞木
published in:大分合同新聞平成25年8月掲載  No.100

現在多くの医薬品が開発されていて、多くの方が服用されていると思います。ただもらった薬を飲めば良いというわけではないのです。ここで例として糖尿病治療薬について書きたいと思います。皆さんもご存じのように糖尿病は血糖値が上がる病気であり、高血糖により動脈硬化が進み心筋梗塞や脳梗塞などが起こる可能性が高くなります。また主な合併症として眼の疾患(網膜症)、腎臓の疾患(腎障害→透析)そして末梢神経障害があります。特に大分市は、人工透析を行っている国民健康保険加入者の割合が中核市(法定人口30万人以上)の中で最も高くなっているので、皆さんも日頃から健康診断などを受けて予防することが重要です。それでは健診の結果病院を受診して薬をもらって、その薬を飲みさえすれば良いと思わないようにしてください。診察時に指導があると思いますが、糖尿病療法において食事療法と運動療法が必要です。(全ての糖尿病治療薬の説明書には、食事療法・運動療法で十分な効果が得られない時に使用することが記載されています。)食事療法などの生活習慣の改善により薬の使用量が減る場合もあります。(もちろん無くなる場合もあります。)

同じ血糖値の推移であれば、薬が少ない(無い)方が良いのは明らかです。糖尿病治療薬で最も注意すべき副作用の「低血糖」が起こる可能性も低くなりますし、当然他の副作用も起こりにくくなります。食事療法などをせずに肥満になれば、薬が効きにくくなる場合もあります。そこで薬の追加・増量になると、薬によっては肥満が進むものもあります。悪循環です。ただ自己流で食事制限をするのは問題があるので注意してください。

最近話題になっている炭水化物(その中でも糖質)制限の食事は、使用している薬によっては低血糖をおこす可能性があるので、行う場合は医師の指導の下行ってください。当然ですが、自己判断で薬の量を変えたりしないようにしてください。それから炭水化物(糖質)制限は、日本糖尿病学会において今年の3月に、長期間の安全性が確立されていないということで現時点では推奨しないとの提言が出ています。ご自身で納得してから行うようにしましょう。ただ日本糖尿病学会も短期間では効果が出ることは認めていますし、積極的に調査・研究の対象とすべき課題であるとなっています。最近糖質制限を推奨する団体(日本糖質制限医療推進協会)もできていますので、数年後には主流になっているかもしれません。

そして薬を減らす(使わない)ことによって医療費の削減にもなります。現在国は、ジェネリック(後発医薬品)の使用を推進して医療費を削減しようとしていますが、先発医薬品を価格の安い後発医薬品に変更するよりも、薬自体を減量する(使用しない)方が医療費の削減ができることは明らかです。

今回は糖尿病に関して書きましたが、高血圧などの他の疾患でも生活習慣の改善により薬を減らす(無くす)ことができる場合があります。薬物療法にしても食事療法にしても、皆さん自身が納得して治療を受けることが重要ですので、お薬等に関して気になる点があれば、医師・薬剤師にご相談ください。

それではお大事に。

 

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