輔仁薬局

健康処方箋 column

緩和ケア

author:輔仁薬局津留店 薬剤師 鳥山 純司
published in:大分合同新聞令和7年2月掲載  No.169

 

緩和ケアは、「がんその他の特定の疾病に罹患した者に係る身体的若しくは精神的な苦痛又は社会生活上の不安を緩和することによりその療養生活の質の維持向上を図ることを主たる目的とする治療、看護その他の行為」と、がん対策基本法第十五条に定義されています。

緩和ケアで対応する苦痛、不安を全人的苦痛(トータルペイン)といいます。この苦痛には4つの側面があるとされています。痛みや息苦しさ、倦怠感など日常生活に支障をきたす身体的な苦痛。不安やいらだち、孤独感などの精神症状による苦痛。家族との関係、経済的問題、仕事上の問題など社会との関わりのなかでの苦痛。人生の意味への問い、死生感に対する悩みなどのスピリチュアルペイン。緩和ケアに従事する医療スタッフはこれら4つの側面を考慮しながら治療、看護等を行います。

私たち薬剤師は、この4つの苦痛の中で、身体的苦痛と精神的苦痛の2つに対して、薬という観点からアプローチしトータルペインの緩和に携わります。例えば、がん患者の身体的苦痛に対して、中心的な治療薬であるオピオイド鎮痛薬(主に麻薬)を適正に使用するために専門的な知識をスタッフ間で共有したり、患者さんに提供したりします。また患者さんとの対話等により得られた情報から治療の最適化を検討し、身体的苦痛の緩和を目指します。

皆さんは、緩和ケアというと癌の末期に行うものと思っていないでしょうか。現在はわが国でも、がんと診断されたその時から、がん治療の開始とともに緩和ケアを開始することが推進されています。すべての患者さんの苦痛の緩和および生活の質向上のために医療スタッフとして支援していきます。

それではお大事に

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